『明恵上人伝記』を読むと、鎌倉時代の華厳宗の高僧、明恵上人は 餓鬼と話をして 仏教の戒を授けている。
ある時、餓鬼の仲間が明恵上人に使える小さな子供に憑りつき、つぎのように語り出した。
「自分は食肉鬼の仲間である。世の中には高僧や名僧と呼ばれる方は多い。しかし、世の中の名誉をすて、利欲を貪り自己を肥やすことをせず、仏の教えに従って理にかない仏道を修行する人は少ない。
明恵上人のような高僧は、インドにいるのかは、まだよくわからないが、中国では今は一人もいない。日本ではなおさらである。
去る2月13日の夜、月が明るく澄んで洞窟の中に差し込み、石の上に風がそよそよと吹くときに、夜通し座禅をしながら禅定に入られる明恵上人のお姿を拝見し、貴く尊敬の思いでいっぱいとなり、感激の涙をこらえることができなかった。
また明恵上人がお経を読まれるお声が身にしみており心打たれた次第であります。そこで私は願いを建てて、生まれ変わり死に変わりして幾千万世を経て上人にお仕え申し上げ、仏法に従って長く肉食をやめましょう。何卒私に仏様の戒をお授けください」
そこで上人は、この餓鬼がとりついた子供に戒を授けられた。そして餓鬼の言うには「私が肉食をやめれば食べるものがなくなってしまいます。ですから上人がお食事の時に少し分け与えていただきたい」
それから上人は、毎夜この餓鬼のために施餓鬼供養を拝まれるようになった。
施餓鬼供養では加持した飲食を餓鬼に施した後、餓鬼に三昧耶戒(密教の戒)や三帰戒(仏法僧に帰依をちかう戒)を授ける。これは単に作法上のことだけではなく、上人の逸話を読むと餓鬼自身が受戒を望んでいるのがわかる。
上人ほど持戒者からの受戒の功徳は大きいが、われわれ末世破戒の凡僧では餓鬼も苦笑いしているかもしれない。
そこで私は、明恵上人が伝えた「持戒清浄の大事」の印明を結誦して、法身の比丘になり、改めて餓鬼に三昧耶戒を授けている。末法の世に、
密教の法の有難きことである。
※大森義成に施餓鬼供養を依頼希望のかたは下記アドレスまでメールください。詳しい要項を送ります。
当庵では七座にわたり如法にご供養し、あわせて尊勝陀羅尼をとなえて施主の滅罪生善を祈念します。供養は継続することも可能です。
なお、施餓鬼供養に関すること以外はお返事できませんので悪しからずご了承ください。
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