これは聖天行者であり、加持祈祷の大家として有名であった三井英光大僧正の加持祈祷行者の心得十ヶ条の第五条です。
それを同師の著作である『加持祈祷の原理と実習』(高野山出版社刊)からご紹介すると
『とかく加持祈祷する行者の中に医薬を否定する人があるが、これは慎むべきである。
大体加持するものはやはり医薬や衛生にも通じていることが必要であり、病人を加持する前に、その病名や症状などもよく聞いてあらかじめその病原のどこにあるかを察知しつつ、最後は仏様にお願いしてその加護を仰ぐようにすべきである。
ただむやみやたらに判断したり思いつきを言ってかえって受者を誤らせることがあってはならない。
大師もまた『秘蔵宝鑰』に「およそ病は四大不調と鬼と業より起こる」と仰せられて、その療法については真俗両面からすべきであることを指示しておられる。
(中略)
従って病人をお加持する場合は医薬も否定せず、内外両々あいまっておかげを受けるように導くのが良い。
弘法大師もかつて嵯峨天皇が御病悩の時、加持水を奉進され、それにお見舞いの書状を添えられて「謹んで神水一瓶を加持してかつ弟子の沙弥真朗を勤し奉進す。願わくは薬石に添えて不祥を除却したまえ」と。
すなわちこの加持水を薬に添えて服してくださいと仰せられている。決して医薬を否定してはおられぬのである』
私もこの三井大僧正のお考えに賛同しております。
時折、身心の不調や病気を施餓鬼供養で改善したい旨のお問い合わせを頂きますが、私は必ず医療や心理療法(カウンセリングやセラピー)による治療を受けた上で、心の安らぎとしてのご供養をお勧めしております。
そして治療中の方は主治医の許可をいただくようにお伝えしております。
ご本人や家族の心の安らぎというのはとても重要です。それが互いに良い影響を及ぼすからです。またご自身の中でも心と体というのは相互に影響しているものだからです。
「その療法については真俗両面からすべきであることを指示しておられる。」
と三井大僧正が述べられているように、真(出世間すなわち仏教)と俗(世間的なものすなわち医薬などの治療)がお互いに補うのです。
確かに私の過去の相談を受けた中でも、亡くなった母親が5年間にわたり毎日夢に出てきて苦しめられると訴える人がいました。
精神科にも5年間通ってると言ってました。主治医がお墓参りを勧めるぐらいの人でしたので理解があり、治療を続けたまま供養の方法を教えて5ヶ月ぐらいするとだいぶ良くなった例があります。当時はメールで対応していなかったため手紙でのやり取りでした。頂いた手紙の文字がだんだんと綺麗になっていくのが印象的でした。もちろんこれはとてもうまくいった例です。
過去の記事もご参照ください。