伏見稲荷の本願所、愛染寺に伝わっていた「稲荷大明神託宣(いなりだいみょうじんたくせん)」は、稲荷信仰における極意が説かれている。わかりやすく意訳してみよう。
もろもろの人よ。鬼神や天魔のごときものであっても、これを嫌ったり憎んだりしてはならない。むしろ大いなる慈悲の心を奮い起こして経典や真言陀羅尼を読み授けてやるべきである。
かりそめにもこれらの霊を降伏して滅ぼしてやろうなどの心を起こしたりしてはいけない。
そうとはいえ、煩悩で汚れている世の中の人々は、自分の気に入らないものはすぐにでも払いのけようとするものである。そのため返って災いの種となることがある。
せっかくの願い事も成就することができずに、1日でも満足な日をすごせぬことになるのだ。
愛染寺の名が彫られた石灯籠