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泉聖天尊のおはなし その1

これは、香川県で活躍された泉庄太郎師(泉聖天尊、生きた聖天さまの意味)(1862〜1918)のお話。同師は生駒山に大阪から直線距離で片道24キロを歩いて600日日参して、不思議な徳を聖天尊からさずかり、多くの人々を救われた。

没後、一時期、八栗寺の裏山、五剣山の洞窟に泉聖天尊としてお祀りされていたので、わたし大森も、お参りしたことがある。水がないところで、信者さんが下からあげていた。その洞窟は現在は封鎖されている。

泉師にまつわる逸話があるので、このブログで少しずつご紹介したい。

 

 

 

 

ある男の人が泉師のもとをたずねて「先生、私の子供は水をみたらおかしくなるのですが、危なくてどうにもならんのです。どうぞ一つおみくじ(義成註、お告げを授かること)をお願いいたします」と。

 

すると泉師は「ああ、これはお前さんのとこに、大事な人を水のなかへほうり込んである。その仏様がこの子に移ったので、水をみたらおかしくなるんだ。おっさん、なんぞ覚えはないか?」た言われる。すると

 

男「先生恐れいりました」

 

泉師「これはその仏様、あげてあげないといかんな、おっさんわかったかい」 

 

男「へい、わかっとるのでごわすけんど」

 

泉師「ただ簡単にわかっとるではいかんでよ。おまはんとこの墓地に石碑がならんどるのを読んでみる。」

「ひい、ふう、み、よう…一つ足らんは、真ん中へんに有った大きな立派な石碑が一つ無い。おっさんわかるかい?」

 

男「へえ、わかります」

 

泉師「ここが大事な所じゃからよう聞きなはれよ。おまはん、この仏さん車に乗せて土手の上へ行きよったな」

 

男「へえ、参りました。石屋がこの石碑、立派な石碑じゃから磨き直したら高くうれるけん、売ってくれ、という」

「そうして石屋に売りに行こうと思って車に積んで、土手の上を行きよった。ところが知り合いの人が向こうから来る。これ見つけられたら大変じゃと思うて、石碑を川のなかへころがしこんでしもうたのです。そうしてから車引いて知らん顔して、他所へいってしもうた」

「どうも恐れいりました。先生、お墓じゃと思うたのが、私ところの先祖が水の中へ落ち込んだんでごわすなぁ」

 

泉師「そうじゃ、そうじゃ、おまはんは石碑で石じゃと思うとるが、ホトケがその中にこもっておいでるんじゃから、それを売りにいきよって、川のなかに転がしこんだら、ホトケさんが沈んどるということになる、これは上げないかんでよ」

 

男「先生ありがとうございます。早速そうします」

と、急いで男は急いで墓石を川から引き上げ、お詫びしてお祀りした。すると不思議に子供はすっかり治ってしまったのだった。

 

このように、非常にすぐれた通力を泉師はお持ちだった。

 


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泉師が夜に日参した生駒山宝山寺参道