鎌倉時代前期、高野山金剛峰寺の検校になった、覚海大徳(1142〜1223)。
自分の前世のことが知りたくて、高野山の奥之院の弘法大師に祈念しました。
すると、大師が彼の過去七生を示されました。
覚海の七生前は天王寺の蛤でした。
その天王寺の西の海にあった蛤を、子供が拾って戯れに金堂の前に持って行きました。
そうして、舎利賛嘆の声明を聞くことができました。
その仏縁で、次には天王寺の犬に生まれ変わりました。
この犬もお経、陀羅尼を聞いた縁で、次に牛に生まれました。
この牛が『大般若経』を書写する紙を運んだ縁で馬に生まれ変わりました。
この馬が熊野への参詣者を乗せた縁で、熊野権現に献じる柴灯を焚く行者に生まれ変わりました。
そして、次にその者が、高野山の奥の院で雑役に従事する承仕に生まれ変わり、大師に奉仕しました。
そして、今世ではその功徳で、検校に生まれ変わりました。
覚海は亡くなるときに、増福院山門の前にある杉の木から翔して天狗に化生して、いまでも高野山を守護していると信じられています。
仏縁の不思議を感じる話ですね。
いま仏さまとご縁のある私たち。過去七生はなんだったのでしょうか?
それがたとえわからなくても、さまざまなご縁を経て、今生に生まれてきたことは想像できます。有難いことです。
そして、今生においても、功徳を積み、仏縁を大切にしたいですね。
覚海大徳(密教大辞典より)