毘沙門天の眷属はムカデだと言われている。
ゆえに、毘沙門天の信仰者はムカデを殺さないのである。
これはどうやら日本独特の信仰のようで、インドやチベットではマングースが眷属のようである。
日本の毘沙門天を祀っているお寺にいる行くとあちらこちらでムカデのロゴが見られる。
江戸時代中期の蓮体和尚が書いた『毘沙門天王秘宝蔵霊験記』には面白いことが書いてあった。
百足(ムカデ)は足がたくさんある。
お金を「お足」というが、百足はお足がたくさんあることが、お金がたくさんに通じるのだと。
あるいは毒虫であっても殺生禁断を勧めるために、慈悲の心で眷属にしたものであると。
そこで毘沙門天の信者にご利益が授かるときにはムカデが現れると言われている。
昔の相場師は毘沙門天を信仰することが多かった。
本当の話かどうかは分からないが伝え聞くところによると…
ある毘沙門天を信仰する相場師がお酒を飲んでいる時に、白い小さなムカデが現れて杯の中にぽちゃりと落ちたと言う。
それを見た相場師は「これは毘沙門様のご利益だ」とそのまんま一気に飲み干したという。
まるでムカデの踊り食いと気味が悪い話だが、それからというもの、相場の上がり下がりを、自分の胃の中をムカデが上がったり下がったりするような感覚で分かるようになったと言われている。
そんな毘沙門天にあるお願い事の仕方をして、財をなした人の話を知人からうかがった。
これは戦前の話だから今はそんなふうにはできないかもしれない。
商売を始めたある人が、その月の売上を毘沙門天のお寺に持っていき、一度お供えして「毘沙門さん今月これこれのお金をお借りします」と言って持って帰るのだ。
これを毎月毎月お参りに行って繰り返すうちに、しまい大きな会社を築くことが出来たのだ。
さらにはそのお寺の信徒総代にまでなったという。
この会社は今、代わりはしているが、まだ大きく商売しており続いている。
天部に祈って福徳を授かったら、それをお借りしたと心がけ、慢心せずに功徳を積めば、それは長く続くのだろう。
もしも慢心して功徳を積まなかったら、お足というように、居心地の悪い場所からは歩いて出て行ってしまうかもしれない。ご用心ご用心。
◎お知らせ
6月7日からの施餓鬼供養の締め切りは6月3日水曜日です。