近代デジタルコレクションで下記の『大木食以空上人遺稿』が読める。
大木食以空上人遺稿
1,窕誓伝(ちょうせいでん) 聖天信仰について書かれた本
3,木食以空上人御伝記 東寺の碩学、長谷寶秀大僧正の記
学僧である長谷寶秀師は『真言宗安心全書』下のなかで編者いわくとして、「玉鏡」に数か所の誤りあることを指摘していて、
「以空上人は末代稀有の大徳なれども、木食苦行の聖天行者なれば、教相の学には深く意を留め給はざりし人と見えたり。ただし文字言句の末には誤りありとも。高徳の人の作にして、当時すでに院の御所に献り、玉鏡の勅題をさへ賜りし程なれば、ただ仰ぎて尊むべし」
と述べている。
つまり、内容には誤っている部分があるけれども、光明真言の功徳を勧める点では尊い本であるとしている。
私は以空上人を尊敬していて、事相においては、以空上人の口伝とされる聖天様の拝み方を修している。一方、教相は正しい部分のみ選択して、鵜呑みにしないという態度でいる。
さて、1の窕誓伝(ちょうせいでん)をはじめて知ったのは18歳のとき。
生駒山宝山寺で入手した『大聖歓喜天利生記』第二巻、大井聖天刊(絶版)の第十二話「奇瑞伝」という項に記されていた。ある人が、古本屋でたまたま聖天尊に関する二冊の本を手に入れてから、聖天尊に導かれる話である。
それを読んで、この本欲しいなと思い念じていたら、ある僧侶から復刻版の『窕誓伝』を頂戴した。
内容は『大木食以空上人遺稿』所収のものと同じであった。
下記サイトからダウンロードできる。
この和本 『窕誓伝』は、たまたま立ち寄った神保町の古書店に積まれた和本の中から発見した。
ちなみに、『大聖歓喜天利生記』の奇瑞伝には比叡山の願海大阿闍梨が刊行した『使呪法経頌註(しじゅほうきょうじゅちゅう)』の話も出てくる。
こちらは『聖歓喜天叢書』として
早稲田大学の古典籍データーベースからpdfでダウンロード可能。
聖歓喜天叢書内容
1,大聖天歓喜双身毘那耶迦徴决
2,使咒法経頌註
ともに天台宗の僧侶、真源の撰
https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko07/bunko07_00514/
ちなみに『使咒法経頌註』の中で著者の真源は、『窕誓伝』の『使呪法経』に説く聖天尊供養の上品中品下品(じょうぼん、ちゅうぼん、げぼん)の解釈に批判的である。
以空上人は上品は浴油、中品は華水供、下品は時時の法施としている。
これに対して真源師はこの説を
「決して用ゆまじきの説なり、いまいわく浴油にも三品あるべし、華水供にも三品あるべし、時時の法施は、その数に入れ難し」
と説いている。
どちらをとるかは、各自にお任せする。
私は体験的に、たとえ、どのようなご供養でも真心をこめて拝めば必ず聖天様に通じ、利益はあるので、その人が続けらる範囲のご供養が良いと思う。
昔は苦労して入手したこれらの古書も、いまでは自宅にいながら拝見できるので、有難いことである。