真言念誦と潜在意識 その1 - 大森義成 滅罪生善道場 密教 善龍庵
「一方そういう環境を作らない記憶もあります。
そのような記憶は、あなた方がこの世で生まれて色々なことをしたり、考えたりする時に記憶として、現実に経験したことの中へどんどん混ざって行きます。
これは、業ではありません。記憶です。そういうものを含めて「行(サンスカーラ)」と言います。
これは一度に説明しただけではわからないでしょう。だいたいのところ、まあそんなことがあるのかなと思って聞いてください。
では、どうして記憶が外界を作る力を持っているのでしょうか。
それは無意識の世界は私たちの環境を作る力を持っているからです。
少なくとも環境を変える力を持っています。
このことから説明すると、マントラや象徴が私たちの潜在意識に影響を与えるということは 、場合によっては私たちの境遇まで作ってしまう力がある、と私は言いたかったのです。
マントラとか陀羅尼は非常に恐ろしい力を持っています。
私たちが頭で考えて、なるほどと納得しなくても、唱えることによって直接潜在意識に影響します。
潜在意識に影響することによって、まず私たちの性格を作ります。
それだけではなく私たちの境遇まで作ってしまう力があります。
ここにマントラや陀羅尼を唱える大きな理由があります。
繰り返し唱えていると、ついに私たちの環境まで変わってしまいます。
今まで不運であった人が、どういうわけか、だんだん幸福になっていくのは、自分の中の潜在意識の世界をマントラによってどんどん変えて、その結果、環境が変わるからです。
このような理屈をたどってみると、昔から、マントラを非常に尊んだということがわかります。」
と佐保田鶴治先生は著書『八十八歳を生きる』でのべられている。
ひとつ気をつけなければならないのは、マントラ(真言)や陀羅尼はやみくもに唱えるのではなく、唱えるにあたっての前提がある。
よき阿闍梨選びが大切であるが、ご縁を得るのは難しい。しかし、求め続ける気持ちが大切だ。
弘法大師は
「冒地(ぼうぢ)の得難きには非ず、この法に遭うことの 易からざるなり」 (性霊集 )と説いている。
冒地(ぼうぢ)は悟りのこと。
悟りを得るより、この密教の法を良い阿闍梨にご縁を得て、真言の伝授を受けるほうが難しいのである。