第四は経典と同化して無我相となり、貪瞋癡(とんじんち)の三毒を解脱するのであります。
人間の罪悪の根本はこの五欲の満足を求めるためには、愛憎を壇にし、殺生、偸盗、妄語、綺語、悪口、両舌、慳貪、瞋恚、邪見などの十悪を犯して、永劫に苦をうけるのですから、その苦を滅するには、この身は地水火風の四大が因縁により、仮に和合し、一時的幻影を現わして時々刻々に移り変わりて、滞りなき無常のものなることを自覚するのです。(大森補、私たちを含む森羅万象は、常に変化して、現象はあるが、実体(永久に変わらないもの)はない。それは物質的、精神的の両方である)
経典はこの道理を説いたものであるから、写経を為すときは自然にこの理に通じ、無我相の人となり、したがって布施、忍辱(にんにく)、智慧の三徳によって(大森補、ここに六波羅蜜のうち三種のみのせるのは金剛経によるからである。六波羅蜜の代表)衆生利済、慈悲の行をなし、一切の苦厄を免れるものであります。
(読みにくい部分は一部現代文に改めた。文責 大森)
※大森補 不幸や悩みの大本は道理に暗いから。写経を繰り返すと真理が腑に落ちてくる。ここぞというときに、必要なお経の言葉が心に浮上してくるから不思議である。
金剛経要品を写経しそれを読誦するとよい。これをやっていると、あらゆる修行や供養の支えになって、順調に進む。障碍(しょうげ)が消散する。なぜならそれを生み出すのは自らの心だから)