真言密教の施餓鬼供養には、そのもとになるテキストがある。それを儀軌(ぎき)という。
何種類かあるが、なかでも
『仏説救抜焔口餓鬼陀羅尼経(ぶっせつくばつえんくがきだらにきょう)』と『施諸餓鬼飲食及水法(せしょがきおんじきぎっすいほう)』(ともに不空三蔵訳)がよく用いられている。
私が修法する施餓鬼供養は『施諸餓鬼飲食及水法』をもとに、江戸時代中頃に活躍された、湯島の霊雲寺開山、覚彦浄厳大和尚が編纂されたものである。
浄厳大和尚は『施諸餓鬼飲食及水法』を大日如来所説と位置付けられている。つまり純粋な密教の施餓鬼である。
仁和寺門跡であった故小田慈舟大僧正の「施餓鬼法講授記」には「この施餓鬼は大日如来の法爾常恒の所作で」あると説かれている。つまり大日如来の自然な大慈悲の活動であり、密教行者が日々施餓鬼供養するのは、これにならっている。
これが他宗の施餓鬼と違う点である。
これが、のちに曹洞宗の和尚に伝授され、それがいくぶん略された形で「甘露門」という作法となった。
『施諸餓鬼飲食及水法』は実際の作法を書いており、その功徳については略説程度である。
一方『仏説救抜焔口餓鬼陀羅尼経』は、釈迦如来所説とされ、作法は短い。いわゆる略施餓鬼である。しかし、功徳については詳しい。それをまとめて紹介すると、
①無量の福徳を具足する
②百千倶胝の如来に供養するのと同等
③寿命延長、体力増益
④一切の霊的存在、夜叉羅刹、もろもろの悪鬼神に侵害されることがない。
⑤すべての呪い怨みになどに害されることがない。
⑥諸仏や諸天善神に守られる。
⑦布施行を成就する
などが説かれている。
当院では、『施諸餓鬼飲食及水法』に基づく施餓鬼法にてご供養する。同時に施主には自宅での追善供養を修していただく。あくまで追善供養である。
私の修法するところに法界の一切の餓鬼をあまねく集めて供養している。
したがって、当たり前だが施主のところには餓鬼はいかないので安心していただきたい。(まれに有縁の方が感謝にいくことはある)
ちなみに、ある地方最大のオカルトスポットの前にあり、霊がでるとうわさされたお寺に住んでいたことがあるが、私はまったくみなかった。おまけに、その後そういうことが自然と収まってしまったようである。
それは、如法の施餓鬼作法により、餓鬼の中の浄菩提心を観じているからである。
つまり、それに対するこちらの見方、心構えが重要なのだ。
南無浄菩提心如意宝珠